性別のゆくえ

私の性別はなんなのだ、という問いを幼稚園児の頃から抱えている。

ちいさい頃はおままごとが嫌いで、スカートが履けなくて、レゴやおっきいブロックで遊んだり、ボール遊びをするのが好きだった(いまも好きだけど。)そうなると自然と一緒に遊ぶのは男の子になって、自然に女の子から白い目で見られる。「あんた、私が好きな○○くんと仲いいの、ムカつく!」等である。
うっせーばーかと思いながらも、そういうことを言うような子と私は同じ性別なのか……と思うと少し憂鬱であった。

中学受験するべく塾に入ると、算数がよくできた。というか算数しかできなかった。「女の子は普通国語ができて算数が苦手なんですけどねえ」と言われた。とにかく負けず嫌いだったので算数で誰かに勝ちたいと思いながら頑張った。不思議なことに算数でのライバルは男の子ばかりであった。解かされるのは男子校の過去問ばかりであった。

私は男だ、と思っていた。
女の形をした男だ、と思っていた。

ラッキーなことに、男友達は私を男として見てくれていた。男の子がやるようなバカなことや下品なことを一緒にやって、一緒に笑えた。その頃受験のストレスがひどかったので、学校で子どもらしくはしゃげるのは本当に楽しかった。


某共学校に受かり、春休みにスカートの採寸に行った。
一応第一志望であったので、母は嬉しそうであった。
私はなんだか空虚な気持ちになった。もうズボンを履いて学校に行けない。男子とは格好が違う。ただの視覚的な線引きだけどなかなかのショックだった。
中学で新しい友達を作ろうとしたが2年間は上手くいかなかった。一緒にいる友達はいるけど、ドラッグストアで化粧品買うのに付き合うのはただただ退屈だったし、友達の家でずっとゲームしていたかったのに「ゲームばっかりはつまんないから買い物行こうよう」と連れ出されたりするのが嫌だった。
3年になってようやく素でいれる友達ができて、なんとなく女子な自分にも慣れてきた。好きな男子ができて女子の恋バナに乗れるようになって「私女じゃん」と思った。外見はなんも変わってないけど性転換した気分であった。

今は、普段は女だと思う、特に女の子を好きだなあって思ってる自分はその相手のことを同性として見ていて、完全に女だと思う。でもやっぱりたまに分からなくなるときがあって、その時はXジェンダー(=男でも女でもない性。両性と無性がある)、特に無性かもなあと思う。まあまあグラグラ。




身の上話が長くなってしまった。
疑問なのは「今ある"男らしさ"、"女らしさ"がなくなれば、誰も自分の性別なんか分からなくなるんじゃないか」ということである。

私が幼少期、自分が男だと自認したのはいわゆる"男の子っぽいもの"が好きだったからである。「男らしいや女らしいって性別で決めるのはもう止めにしようよ」という運動が少なからずあるけど、それが本当に果たされたら、「身体的には男/女だけど、精神的にはどっちかわからない」って人がたくさん生まれる気がする。

性同一性障害の人のドキュメントを何回か見たことがあるけど、「僕はスカートを履いて化粧したい」という男の子がほとんどだった。(女性の性同一性障害のドキュメント見たことないなあ)
普通にスカートを履いた男性がそこらじゅうにいれば、多分その人だって「自分が男じゃない・女かもしれない」とは思わないだろう。
そういう環境的な性差別がなくなって、男女の身体的な差(男の方がたいてい筋力があるだとか、女は生理があるだとか)だけが男女の性差になったとき、一体次はどういう問題が起きるのかが想像できない。


そういう世の中がくればいいのになあ。
ちいさい頃女に見られるのが悔しくてしくしくしてた自分をたまに思い出す。