のりこえる

RADWIMPSが好きだ

中学1年の秋か冬に、私の好きな文章を書ける人が有心論を教えてくれて、そこからはまった
中学生時代はRADばかり聴いていた、高校受験のリスニングもRADでしのいだくらい、ので、どうやら台本やら小説やら書くとRADが紛れ込むらしい
前々前世が流行った頃、好きな子、好きな子も演劇部だったので私の文体を知っている、にRAD絶対好きじゃんと言われた、一昨年の、風が強くて晴れていたけどなんとなく寒い日

RADWIMPSが好きだ

しばらく好きでいると、歌詞を覚え、歌詞の癖に慣れ、思考回路までその癖に侵食される
ようやく宗教じみた状態から脱したのは、高校の入学式、半分付属のようなものだったから同じ中学の子もたくさんいたのに一緒に行こうと言えず、駅からひとりで歩いて、たまたま目の前にひとりで大荷物で歩いてる子がいて、あのこは外部生だろうと、きっと私と同じでひとりで寂しいに違いないと、なぞの勇気を使って話しかけて、好きな曲とかいろいろ訊いた時、意外と駅から高校が遠くてふたりで迷子になってたどり着くのに時間がかかった
話しかけた子はのちに好きになる子




BUMP OF CHICKENが好きな子がいた

中学行くのに40分バスに乗らなければならず、そのバスに一緒に乗っていた子だ
BUMP OF CHICKENの良さをとくとくと語られ、おすすめのアルバムまで紹介されたが、iPodにいれて何度も何日も聴いたが、いくら聴いても刺さらなかった
刺さらなかったと言っても、その子は諦めなかった、今となってはわかるが、とても好きなものは自分に侵食しすぎて、半ば自分の一部になっているので、それを否定されるというのはニアリーイコール自分を否定されるということなのだ、彼女は私がBUMP OF CHICKENを好きになるように、私が彼女自身を好くようになるべくの努力を諦めなかった
私はBUMP OF CHICKENを好きになれなかったし、その子のことも好きになれなかった、でも憧れていた、好きなものを好きだと堂々と言い続けられる心、好きな男の子を必死に口説き落とせるこころ、ある程度の計算と素直さを持って可愛く殴り込めるところ、羨ましかった、きっと羨ましすぎて悔しくて好きになれなかった、好きになってやるものかと思っていた



私の好きな子と、そのBUMP OF CHICKENが好きな子、面倒だから前者をA、後者をBとおくけど、AとBが知り合ったのは大学受験の予備校だった
無気力のままバイトに行って帰ってだらだらしていた夜、Aに電話をかけた、なんの理由もなく、いやうそ、うん、好きだから、声を聞きたくてかけた
Aに電話をかけるのは当時しょっちゅうだったから、向こうも特になにも考えず、どうでもいいことを話していた、話していたと思っていたんだけど、Aはあのさぁ~~~と前置きしたあと、Bと仲いい?ときいてきた
私は困った、過ごした時間は40分かける200日くらいかける3年ぷらすカラオケ行った数時間、まあまあ長い、長くいれるってことは仲は悪くないってことだけど変な意地のせいで仲いいとは言えない、私はうんとううんの間のような返事、うんと言えない時点で仲良くないのは明らかな返事、をしたあと、中学の頃通学路が一緒だったことを告げた、Aは、Bのことが苦手だと言った
曰く、Bはしょっちゅう遊びに誘ったり引っ付いたりしてくる、好きとも軽々しく言う、家が遠いのに来てほしいとせっつく、きっとBは付き合ってる男子がいない寂しさを私で埋めているのだろうと言ってきた
そうかあ、とか、大変だねえ、それは嫌だよねえ、と言いながら私はスマホを持ってる手が強ばった
私はAが好きだった、過去形ではなくて完了形、好きだってことはその電話の半年前くらいに言った、好きだって言っただけで付き合ってくださいは言えなかった、そしたらそっかあの返事だけで終わり何事も起こらず友達のままだった、私の中でそれは大きなできごとで、うまく咀嚼できないまま、なんとか友達っぽいふりをしていた、その最中のその言葉は、首にナイフを突き立てられた気分だった、私だって私が声聞きたいだけでAにしょっちゅう電話したり私が会いたくて遊びに誘ったりしている、私はBと何が違うのか、私は、私が気づかぬうちに、私が好きになってやるものかと思っていたBと同じことをしているのか、
私は嫌われるのではないだろうか
Aはそんな遠回りに嫌みを言うようなタイプではないので、ただ単にBへの愚痴を誰かに聞いてほしかっただけだと思う、それは真だと思うのに、それからAとの接し方がわからなくなった、当たり障りなく人間関係を築けるAの、愛想が良いとは言えないけど賢くて頭が良くて優しくて声が良くて可愛くてヒトとしてできてるAの、人への嫌悪を知ったのがはじめてて、人間なんて誰かを嫌いになって当たり前なのに、そんな当たり前が怖くなって、いつ私が嫌われるのか怖くなった、私が弱くて柔い時に支えてくれてたAがそうやって頼ってくれることは、恩返しができた気になれて本当に嬉しかったけど、愚痴を聞くたびに少しずつ傷付いた、私がAを好きなのは男の代わりじゃないという証明がしたくて、好きだからそんな些細なことで傷付くのだから好きでいるのを諦めようと思って、電話したその少しあとに男友達と付き合った、付き合ったってAが好きだった、過去形にはならなかった、どうしようもない

傷付くたんびに、私はBUMP OF CHICKEN好きじゃないからという絆創膏を貼った、BUMP OF CHICKENが好きじゃないからBとは違う、きっと違う、私とBが同じヒトに寄りかかったとしても、違う

予備校通ってから1年でAもBも大学を決めて、離ればなれになったからもう愚痴を聞くことはなくなった、だからもう傷付くことはないんだけど、同時に頼られることもなくなって、さみしくてたまに思い出してしまう、思い出したらあの風の強い日にAに言われた、RAD絶対好きじゃんの声を引っ張り出してごまかす、日本は無宗教だから、音楽は宗教になりえる、私とBは宗教違い
あれからいろいろな音楽を知って、クリープハイプサカナクションも聴くのに、中学のあのころの、思考まで食い散らかされるような感覚はもうない、私はもうだいぶ人間としてある程度、固まってしまっているのだ、イノチミジカシとは思えず、バッハの旋律を聴いてもなんとも思えない、ヒキコモリロリン


私はこれから先、今の私の思想や武器でこれからのいろんなことと戦わなければいけない、Aへの好意も、試験も、社会も、演劇も、これでのりこえつづけなければいけない、しばらく読点ばっかりで句点がない、それは恐ろしいけども、けれどRADWIMPSが売れたから、天才として社会に認められたから、私はやってけそうな気がする、やっとそんな気がしてきた